…女はそれを遠くから見ながらしばらく何かを迷うように立ち止まる。

少しして、女はその男の子に近寄っていく。

その男の子は泣いていて気づかない。

『ねぇ…』

声をかけると男の子は肩をビクッとこわばらせゆっくりと顔をあげる。

そして身体と同じようにあざが目立ち涙でぐちゃぐちゃの顔で女を見上げる。

『こんなとこで何してるの?』

そう聞くとその男の子は、ギュッと唇を結び眉をよせ、必死に涙がこぼれないようにしていた。

女は男の子が答えないことにどう思ったのか、わずかに眉根をよせる。

『まぁいいけどさ。
こんなとこいたら、何されるかわかんないよ?』

それでも男の子は何も答えず口を結んでいる。
でも、男の子の拳の力が強まったことから少しは恐怖があるのだと分かる。

女はまたしばらく何かを考えるように黙った後、小さく息をつきながら

『私と来る?』

そう言っていつも通りの無表情で男の子をまっすぐに見つめた。