カメラとカメラバッグを肩から下げて、外へ出た。

さあ、どこから取材しようかと、宿に面した通りを見回す。

そこでようやくアレックスも気付いた。

数人の通行人が空を見上げている事に。

全員が同じ方角を見上げていた。

釣られてアレックスも見上げてみる…と。

(何だ?)

真っ黒い煙が蛇行しながら、風のないバグダッドの青空に禍々しく立ち昇っていた。

砲撃か、爆弾テロか?

次の瞬間、アレックスは走り出していた。

煙の上がっている場所は、サドゥーン地区のほぼ真西。

距離は恐らく1キロ前後。

そこにはアメリカ駐留軍の本部があった。