「えっ?…うん」

屋上に行くと渋谷くんが急に話し出した。

「わぁーやっぱり屋上は気持ちいいわぁ。」

そう言って渋谷くんは大きく伸びをする。

「空が青いなぁ~!」

「渋谷くん…。」

「うん?」

「私ね…あの。」

ちゃんと言わなきゃ…!

「俺たち別れよっか…。」

「えっ…?」

渋谷くん…?

「何かさぁ、昨日とか

熱くなっちゃってごめん。

何やってんだろーなっ。

カッコ悪かったでしょ?」

そう言って渋谷くんは笑っている。

「そんな事…ない。」

「でも正直…!

真凛とは合わなかったよなぁ~。」

「渋谷くん…?」

「真凛って可愛いけどさぁ…

何か物足りないっていうか。」

「…………。」

「だから俺にはちょっとキツいわ。」

渋谷くんの嘘つき…。

渋谷くんがそんな事思うわけないよ。

自分が悪者になろうとしてるの?

悪いのは私なんだよ…?

私…本当に…

本当にこれでいいの?

渋谷くんは私の事本当に好きになって

ちゃんと向き合ってくれた人なんだよ?

最後まで渋谷くんに甘えるつもり?

「だからさ!もう終わり!

これで俺もスッキリ!

じゃあ、俺、行くわ…。」

そう言うと渋谷くんは

私に背を向けて歩き出した。

…ダメ…。

このままじゃダメ!!

「渋谷くん!!」

私は、声を振り絞って大きな声で叫んだ。

「渋谷くんは私の後ろでも横でもなくて

目の前で出会った人でした。

だから、ちゃんと渋谷くんの前で

ちゃんとお別れさせてください…。」

「…真凛っ。」

渋谷くんが驚いたような顔で

私をじっと見つめる。

「私…泰詩が好きです!

本当はずっと好きだった。

でも私…鈍感で。

全然わからなくて…気がつくの遅くて。

好きって何なのかわからなくて。

だから渋谷くんの事

いっぱい、いっぱい振り回した…

たくさん傷つけた…。

ごめんなさい…。

謝っても…

許してもらえないかもしれないけど。

でも…

渋谷くんにはちゃんと伝えます。

私の事好きになってくれた人だから。

泰詩…真面目で不器用だから

よく冷めてるって誤解されるけど…

でも本当は温かくて優しくて…

いつもこんな私の隣にいてくれて

どんな私でも、たとえ呆れながらでも

私の事、最後には絶対に助けてくれて

守ってくれて…。

私の右側をいつも歩いてくれて…

そんな泰詩が大好き…。

だから、ごめんなさい。渋谷くんとは

もう付き合えません…。

別れてください!」

私の目に涙が溢れてきていて

下を向いたら

涙が落ちてしまいそうだった…。

「私…やっぱり最低だっ…。」

ポタ…

涙が頬を伝って落ちる。

「最低なんかじゃない…。」

そう言うと

渋谷くんが近づいてくる。

「えっ?…」

「真凛は最低じゃないよ…。

俺が好きになったんだから。

俺が真凛に好きだって

言いたかったんだから。

それにさ…

誰かを好きになるのって

理屈じゃないから。

気がついたら好きなんだよ。

いつもその人の事しか

考えられなくなって、気になって…。

だから、真凛は最低じゃない。」

ポタポタ…

涙が溢れて止まらなかった。

「渋谷…くん…。」

私は必死に言おうとしたけど

涙で言葉にならなかった。

「じゃあ、別れますか!」

その言葉に私が渋谷くんを見上げると

渋谷くんは笑っていた。

私の気持ち…

受け入れてくれて

こんな私の事を許してくれた。

渋谷くん…ごめんなさい。

ありがとう。

私を好きって言ってくれて嬉しかった…。

「はい…。」

私と渋谷くんは別れた。

渋谷くんは本当に真っ直ぐで

私…

本当はずっと羨ましかったんだ。