家まで後少しの曲がり角に人影が見えた。
えっ…真…凛?
そこにはブロック壁に
押し付けられた真凛と
真凛の肩を掴んで
上から見下ろす渋谷がいた。
何してるんだよ…まさか
俺の足が速まるのと同時に
気づくと…
俺は真凛の肩を掴んでいた。
「お前ら…
こんな公衆の面前で何してんの?
恥ずかしいやつらだな。」
口では冷静な事言っていても
喉が枯れて乾いていくのがわかった。
真凛は俺をビックリした顔で見ている。
渋谷が俺を睨み付けてきた。
「何で仲原がいるんだよ?」
渋谷の言葉が
俺の中の嫉妬心を増殖させる。
「何って、俺の家…
この道を曲がったとこなんで。」
そう言うとすぐにその場を離れた。
最悪だ…こんなの見たくなかった。
家の門を開けると後ろから真凛の声がした。
「泰詩!」
振り返ると真凛が立っていた。
何だよ…何で追いかけてくるんだよ。
渋谷とキスしようとしてたくせに…。
ズキン、ズキン…
胸の奥が苦しくて鉛の様に重い…。
「あそこで渋谷と何してたの?」
「何って?」
本当は聞きたくない…。
嫉妬で俺の気持ちは
ぐしゃぐしゃだった。
真凛を責めてしまいそうなのを
抑えるのに必死だった。
「言いたくないならいいよ。
そっか…
渋谷とうまくいってんだ…。」
「………」
「やっぱ渋谷が好きなんだな…。」
「まぁそうだよな…
キスするくらいだもんな…。」
違うって言ってくれ。
本当は違うって…。
「そんなの…
泰詩に関係ないでしょ!
私が誰とキスしたって…っっ。
泰詩はいい感じな子がいるんだから…。」
ズキッ
"関係ない"
ああ、そうかよ…。
"いい感じの子"なんて
いない…
いるわけないだろ…。
どうしていつもこうなんだろうな。
「そうだな…関係ないな。」
「泰詩…。」
「俺にはいい感じな子がいるしな…。」
君が好き…。
「そっ、それって…どんな子なの?」
「あっ、あのね…
絵莉ちゃんが気になってたから…」
なぁ…。
真凛はどう思ってる?
俺はいつだって真凛しか見てないから
真凛の事を教えてよ…。
「俺の好きな子は……
笑顔がとっても可愛い子で
その子のためなら何でもしてやりたくて
ずっと一緒にいたいって思ってる…。
そばにいるといとおしくて
しょうがない…よ。
俺にとって世界一可愛い子だから。
でも…真凛には関係ないよな。
渋谷がいるし、俺と真凛は友達だもんな。」
友達…。
一緒にいるために無理やり友達?
これからずっと
自分の気持ちを隠して
友達続けるつもりなのか?
「じゃあな…。」
俺は真凛から目を反らすと家に入った。