俺の顔をずっと見つめていた

真凛が笑って俺の手を掴んだ。

「……真凛?」

真凛は、その手をギュット握りしめて

自分のコートのポケットの中に入れた。

急な不意討ちで胸が急にドキンッとする。

「…ねえ、泰詩…」

「…うん?」

「勿忘草の花言葉って知ってる?」

「え?」

もしかして…

「私ね、昔調べたんだよ…?

私を忘れないでっていう意味と後、一つ…」

その瞬間俺達の声が揃った。

『真実の愛…』

「え?今…」

そう言って真凛が驚いた声を出す。

まさか君も知ってたなんて…。

「…俺も知ってた。」

「え~そうだったんだぁ~

泰詩をビックリさせたかったのに…。」

真凛が笑って俺の顔を見上げる。

俺もその笑顔につられて笑う。

こんな偶然が起こるなんて

思いもしなかった。

僕たちは好きな物が似ている。

たったそれだけの事かもしれない。

でも出会った時から僕は君で一杯だった。

僕は君にずっと恋していた。

これからもずっと…。

「俺は、草花オタクだぞっ。

知ってるに決まってるだろっ?」

そう言って真凛を見ると

真凛は少し口を尖らせている。

「…もうっ…

せっかく…調べたのになぁ…。」

真凛は、少し残念そうに下を見て

小さな声で呟いた。

「でも…真実の愛って素敵だね。」

その言葉に胸がドキンと跳ね上がる。

「真凛のは…真実の愛なの?」

俺は知りたくなって思わず

真凛に聞いてみた。

「えっ、あっ…」

真凛があたふたしながら

返事に困っていた。

それを見たら俺は咄嗟に

「バーカ!」

といつものように平気なフリをしてしまう。

君が少し困った顔をしたのを見て

胸がズキッとして気持ちが沈んでいく…。

こんな些細な事で一喜一憂する自分が

バカみたいで…情けなくなる。

でも…

俺と同じ気持ちかな、なんて

少し期待していたんだ。

「…バーカ?」

君は少し頬を膨らませて俺を見た。

…君が好き。

目の前にいてもずっと我慢してた。

ずっとそうだった…見ているだけ…。

だけど、今は少し違う。

想いは伝えないとダメなんだと知った。

本当に大切な事は一つだった。

「嘘…ごめん。

俺、本当はずっと…

真凛に、この事を言いたかった。

"真実の愛"だ…って。

だから…俺の気持ちも、同じなんだって。」

そう言って俺は真凛の頬を両手で

軽く触れ、真凛の可愛い大きな瞳を

じっと見つめた。

真凛は、少し驚いたような顔をした後

「うん…私も……

私も泰詩と同じだよ。

真実の愛だって思ってる。

だから…

この事、ずっと忘れないからね。」

そう言って真凛は、笑った。

その言葉に、可愛らしい笑顔に…

昔の僕と今の俺が重なっていくような

不思議な感覚になる。


ほんの少しだけ勇気を出せば

前に進める…。

それだけの話だったのかもしれない…。

でもこの出来事は、奇跡みたいで

眩しくて…。

「ねぇ…泰詩っ。」

真凛が俺の手をギュッと握りしめる。

その瞬間…

胸がドキンと高鳴った。

俺は、また条件反射で

何でもないような顔をしてしまう。

「…何…?」

「これからもよろしくね!」

そう言った真凛の笑顔が

外灯に照らされて最高に可愛いくて…。

「うん…よろしくなっ。」

俺はもう我慢しないで君をギュッと

抱きしめると…

「…大好きっ。」

そう不意討ちで君が呟いた。

「……っっ」

俺は不覚にも耳まで真っ赤になっていた。

それと同時に、抑えている物も溢れてくる。

君の香りを胸いっぱいに感じながら

初めて笑った君の笑顔を思い出した。

そしてもう一度

ギュッ……と強く君を抱きしめる。

大好きな君が今、俺の腕の中にいる。

それだけで幸せ…。

だからこれ以上は…望まない。

「…泰詩?」

俺の腕の中で君が甘く、俺の名前を呼ぶ。

「…うん?」

「…キス…したい?」

可愛い声で急に俺のハートを

鷲掴みにする。

「…えっっ…!?」

今…何て…?

「…だって、さっき…

しようとしたんじゃない?」

「そ…そうだけど…っ…

でも、強引なのはやっぱ良くないし…

真凛の気持ちも確認してないし…。」

「フフッ…

何で、そんなに焦ってるの?」

そう言って真凛は、笑っている。

「…ばっ!焦ってないから…っ。」

俺は、恥ずかしさから必死で否定した。

「…いいよ」

「…えっ?…真凛…」

「…泰詩なら…いいよ。」

そう言って、照れながら俺の顔を

笑って見上げ瞼を閉じる君…。

さっき見た長い睫毛…。

…ピンクの唇に吸い寄せられて

ゆっくりと顔を近づけていく…。

真凛…君に触れたくて…

ずっとずっと触れたくて…

その願いがやっと叶う…。

今…この瞬間に。

だけど…

やっぱ、俺…焦りすぎてるから

これ以上は…まだ…

「…無理しなくていい。」

そう言って俺は、君のさらさらの髪を

優しく撫でた。

「…えっ、無理なんて…っっ」

真凛が少し不安そうな顔で俺を見る。

そんな君を見て俺は、少し笑う。

真凛のさらさらな髪を遊ぶように

ゆっくりと指でとかす。

そう…

俺は君に触れたかったんだ、ずっと

こんな風に…。

やっと、それが叶った。

暗がりでも光る花みたいに

眩しくて、綺麗で…。

大切な俺の宝物。

ずっとずっと…大切にしたい。

本当は、とっくに気付いてた。

「俺…もう、十分幸せだから…。」

そう言って俺は、真凛の頬を両手で

優しく挟んだ。

「真凛…大好きだ。

ずっとずっとずっと…大好きだ。」

真凛の顔を笑って覗き込むと

真凛もいつものようにとびきり可愛い

笑顔になる…。

「私も、ずっとずっとずっと大好き…。」

二人で顔を見合わせて、笑い合う。

そして、君の手をギュッと

握りしめて歩き出した。

勿忘草の様にずっと変わらないから…

ゆっくりと育てていこうな…。

この手を離さない。

これからもずっとずっと…

僕は、君が好きです。