「え?何?」

「ううん、なんでもない。」

「渋谷くん、それ…

テニスラケットだよね。」

「そうだけど?」

「テニス部入るの?」

「うん、もう入ってるよ。」

「早いね!迷わずなんだ…。」

「俺、中学からテニスやってたから。」

「へぇ~そうなんだぁ。」

だからかぁ…

細いのにガッチリして

引き締まってる…。

「市ノ瀬さんは?部活決めたの?」

「まだだけど…。」

「よかったら…

今日見学やってるから

見に来ない?

先輩にも言っとくし。」

「本当に?!

ありがとう…っ!行きたい!」

そう言うと私は笑って

渋谷くんを見た。

「じゃあ、放課後に。」

「うん!!」

「渋谷くん、あまり話とかしない人

なのかなって思ってたよ…っ。」

「そんな事ないんだけどさ…でも

よく目が死んでるとか

生気ないとか言われる。」

「俺、目つき悪いからね。」

「嘘~!そうなの?

渋谷くんの目カッコイイと思うよ?

それにさっきも笑ってくれたよね。」

「か、かっこいい?!」

「うん!」

渋谷くんは広めの二重まぶたで

少し白眼が多いからか

何か猫みたいでミステリアスな雰囲気…。

少しダルそうな目をしているせいか

ちょっと冷たそうな感じがするけど…

笑うと、とっても優しい顔だった。

「市ノ瀬さんっていつもこんな感じなの?」

「うん…何か変かな?」

「そっか…

いや、そんなんじゃないけど…

俺は市ノ瀬さんが

ニコニコして話してくれるから

つられるっていうか…。」

「じゃあ、これからはいつも

渋谷くんにニコニコするね!」

私が笑うと渋谷くんは

机に突っ伏してしまって

何かぼそぼそって呟いてた。