僕は、君が好きです。

その言葉に渋谷くんが振り返った。

「あのさ…

"友達の好きな人を取る"って何?

それって、もう誰かの物なわけ?

市ノ瀬が裏切った?…くだらないんだよ。

お前らにさぁ…

人の気持ちを語る資格なんかないだろ…。

今、お前らがやってる事が…

一番最悪じゃないの?

岸田さん…

市ノ瀬と友達じゃなかったの?

俺にはそう見えたけど…。」

その時…一瞬絵莉ちゃんの肩が

ビクッとした気がした。

そして渋谷くんは

黙って私の手を引いて教室を出た。

出ていく私達に、もう誰も

何も言わなかった。

渋谷くんは一階の渡り廊下の所で

私の手を離すと水道でタオルを

濡らしている。

そして渋谷くんは

校舎の中庭のベンチに歩きだして

そこに座ると私に手招きをした。

私が渋谷くんの隣に座ると

「市ノ瀬、大丈夫?

足のケガ…ちょっと見せて…。」

「あっ、大丈夫…ちょっと擦りむいた

だけだから…。」

私が膝を手で隠すと渋谷くんは

私の手を退かして膝にタオルをのせた。

「あ、ありがとう…。」

「後で保健室行きなよ?」

「うん…。」

私がチラッと渋谷くんを見るとフッと

口元が緩んで優しい顔になった。

少しの沈黙が続き、渋谷くんが

それを破るように明るい声で話す。

「でもさぁ、あんなのマジであるんだな?

女子って何か大変だわぁ…。」

そう言うと笑って私の顔を見た。

「渋谷くん、ごめんね。

私のせいで嫌な事いっぱい

言われちゃって…。」

私が渋谷くんの顔を見ると

「何で市ノ瀬が謝るの?

市ノ瀬は、全然悪くないじゃん。

俺はあんなの全然気にしてないよ。」

そう言って渋谷くんはまた笑った。

「でも…。」

「それにさ市ノ瀬が

俺の事守ってくれたじゃん。

市ノ瀬かっこよかったよ!」