"俺の事見てくれるまで離さない"

真凛はそう言った俺の顔を

ずっと見上げている。

俺はもうかまわずその言葉に続けた。

「真凛にとって俺はただの友達?」

さっきからこんな事を言い出してるのが

自分で信じられなかった。

でも…

今は何も考えられない。

あの日と一緒…

その後どうなるかなんて考えてなくて

むしろそんなのどうでもいいって思った。

それほどに…

君に見つめられると、触れると

君がほしくて、ほしくて

どうしようもなくなる。

俺を好きになってほしい。

「俺は、真凛にとって…

ただの幼馴染みの友達?

でも俺、一度も…真凛を友達として

見てない…。

昔からずっと、真凛は俺にとって

友達じゃなかった…。

だから…ごめん…。

俺、もう…嘘ついてやれないよ。」

俺の問いかけに

真凛は何も言わずに

俺の顔を見つめていた。

ただ、その瞳は相変わらず

澄んでいてとても綺麗だった…。

ガラッ!

「あれ!仲原?」

ドアが開いた瞬間…

俺達は手を離してお互いに離れた。

その衝撃で、床に刷毛が落ちた。

俺がドアを見るとクラスの男子が

一人立っていた。

「ベニヤ板、手伝いに来たぞ~。」

「…あっ…悪いっ…。」

そう言うと、俺は何もなかった風に

用意していたベニヤ板の所に行って

男子と一緒に持ち上げた。

ふと真凛に目をやると

真凛は床に落ちた刷毛を拾おうと

身体を屈めていた。

俺は教室のドアを出るまで

ずっと、真凛の姿を見つめていた。

真凛がもう一度俺を見てくれたら

振り返ってくれたらいいと

心の中で願った。

あの時間がずっと続いてくれたら

君をずっと見つめられたらいいのに。

俺が教室を出る間

真凛はずっと俺に背を向けたまま

一度も振り返らなかった。

そんな君を見て

いつの間にか胸の高鳴りが

ざわめきに変わり

不安の波が押し寄せてくる。

もしかして…諦め悪くて呆れた?

気持ち悪いとか思った…?

そう思ったら…

急に胸が締め付けられて

苦しくて不安でたまらなくなった。

君に嘘をついたままでいたら…

こんな気持ちにならなくて

すんだのかもしれない…。