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メイド喫茶のポップな文字が躍る看板を外したら、殺風景な白い壁があらわになった。

「明日香、ありがとう。男子より、明日香の方が頼りになるわ」

脚立の上に立っている私は、大きな看板を両手で抱えたまま下を見る。

クラスの女子がふたり、私に尊敬の眼差しを注ぎながら、手を伸ばしてくれていた。

私は胸を張ってにっこり笑う。

「こんなのお安い御用だって。腰が重い男子より、いつでも私に頼んでよ」

「うん、サンキュ」

脚立の上からそっと看板を渡すと、ふたりは細腕でそれを抱え教室の中へと消えていった。

すると、糸が切れたように漏れた私のため息が、廊下に漂った。

笑顔は剥がれ、脚立の頂上から廊下を見下ろす。