* 「橘樹さん」 これはイケメンだな。 声だけで判断し、宗雅が顔を向けると予想通りだった。 茶色のさらさらした長めの前髪。 優しげな顔立ち。 あの俳優に似ている。 「こんにちは、緑川先生」 明らかに棘のある声で碧が答えて、カウンターに歩み寄る。 「科研の出張申請書ですか?」 「ええ。 これでいい?」 「はい。 処理しておきます」 碧は書類をつかむと、自分の席に放って、宗雅との打ち合わせの席に戻ってきた。