「内藤さん。
ありがとうございました。
後は、こちらで出来ますので」
1時間ほどたった後、碧から声をかけられた。
差し出された手に宗雅は素直に書類を手渡した。
職員でも無い部外者の人間を、長く使っていることに、周囲の目もあるだろう。
渡りに船と考えたわけでは無い。
その日の帰り、門へ向かう途中、M棟を見上げる。
庶務部の電気はやはり点いていた。
「こんばんは」
驚かしてはいけないと思い、事務室の入り口で声を上げた。
事務室の奥の方で、艶やかな黒髪の頭が動いた。
「はい」
返答があってから碧が顔を出す。
内藤を見て瞬きをした。
「なにか?」
こういう返答だろうなあ、と予想していただけに、宗雅は思わず笑みをこぼした。

