「私を丸め込めなかったということ?」
「ある意味ね。
日本では、夫婦喧嘩は犬も食わないっていうんだろ?
秘書の立場としては放っておくんだけど、友人としてはね。
サトシがこんなバカなことをするのが、信じられないけど、本気の女に対してレベルは高校生らしい。
レイカ、今回は勘弁してやれよ。
あいつ、ストレスがたまっていて、レイカとじゃれるのが気晴らしなんだから」
麗華は眉をぴくりと動かした。
「あの行動の、どこがジャレ?」
「だから、高校生なんだろ」
「でも、だけどね」
麗華はむうっとした顔をしばらくしていたが、やがて諦めたような表情になった。
「なんか、わからないけど、わかった。
怜士が策を練ったとしても、ケビンとフレッドは騙されないしね。
かといって、怜士と一緒に二人が私に不利なことをするとも思ってないから。
私は。
あなたたちを信頼している」
急に麗華の雰囲気がシュッとシャープになり、ケビンに向けるまなざしが変わった。
道を誤っている者を正しく導く者。
ああ、そうか、だからこの人はあの人の妻なんだ、と碧は妙に納得した。
あの人の途方もない“負”を、この人が周囲とのバランスをとっているのだ。

