夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)



二の腕を掴まれて引っ張られ、誰かの胸に鼻をしたたかにぶつけた。


「なんで、黙って帰った?」


上から降ってくる声と、覚えのある香りに、ほっとしたのと同時に、どぎまぎする。  


「あの、一応、声はかけましたよ?」


恐る恐る言うと、無言になった。


息は弾んでいるし、鼻を押し付けられたシャツは湿っている。


「聞こえなかった」


ぶっきらぼうに言って、腕の力を緩めた。


「巻くのは慣れているけど、追いかけるのは慣れてないから、本当に・・」


独り言のような呟きに碧が見上げると、手の甲で額の汗をぬぐって、髪をかきあげていた。


気づいて手を止めると、碧をじっとみつめかえす。


「戻ろう?」


ふわっとした笑顔に反射的にうなずいて、我に返る。