*


「碧さん」


柔らかい呼び声に目を覚ました。


「帰るから、カギ閉めて」


うなずいて起き上がった。


土曜日でも、こんな早朝に帰るんだ。


宗雅は靴を履くと、いつものように軽く挨拶をして背を向ける。


「あ」


碧の小さな声に振り返った。


“これからも時々、来ますか?”


言えずに飲み込んだ。


「なんでも、無いです」


うつむきながら呟いた。