布越しに宗雅の体を感じて、じかに触れてみたいという欲望に結びつく。
いやいや、おかしいって。
酔っぱらったような気分で腕の中でじっとしていたが、やがて電車の中から引きずり出された。
ホームを抜ける風がいつもより冷たい感じがする。
「橘樹さん。
ああいう時は、俺に話しかけるとかして、連れがいることがわからせないと」
いつもの距離感で立っている宗雅のちょっとあきれた声。
「そうしたら不用意に触ってこないんだから」
そうか、それでこんな恋人同士みたいな演技をしてくれたのか。
「すいません」
申し訳ありません。
全力で胸の中で謝る。