4月の初旬に説明を求められた時に、この調査も話をしてあった。
あの時は面倒と思っていたが、今は質問してくれて感謝だ。
二人しかいない事務室にタイピングの音と紙をめくる音だけが響く。
椅子のきしむ音がして、宗雅が立ち上がった。
「これ、入力終わりました。
少しの間、席外しますね」
ちらりと壁に掛かっている時計を見上げてから背広の上着を羽織り、資料の一束を手渡す。
「はい。
ありがとうございました。
この先は私でやりますので」
自席から立ち上がると、ぺこりと頭を下げる。
「確認なんですが」
宗雅は碧の隣までやってくると、上体を屈めてデスクに片手をつき、マウスを動かした。
ふわっと香りがした。
いい男はいい香りがするって本当なんだ。
これ香水かな。
欲しいかも。
葵に聞いたら、わかるかな。

