「じゃあ、これで」
最後のドアをくぐると、宗雅はにこやかに笑って去っていった。
碧は黙って頭を下げる。
恥ずかしい。
恥ずかしい、恥ずかしい。
あのにこやかな笑いは絶対、バカにしていたと思う。
言うなれば、アラサーの女なんかに手を出すかよ、自意識過剰すぎ、だ。
一気に疲れて、階段を上がる気になれず、エレベーターのボタンを押した。
あんまり男性に優しくされたことがないから、されちゃうと簡単に心動いちゃうんだよね。
でもああいう人たちって、当たり前に自然に出来る人たちで、それがもてる理由でもある。
前もそれで痛い目を見たじゃん。
自虐ネタを思い出して、気持ちが更に傾斜していく。
だから、無視するのに限るのだ。
奥歯をぐっとかみしめると、エレベータに乗り込んだ。
いつもの変わらぬ夜を過ごすために。

