夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)



ドアに寄りかかり、長い足をクロスさせている立ち姿は、雑誌の撮影のようだった。


物思いにふけっている横顔。


通っている鼻筋に、優雅な曲線の口元。


碧の足音に顔を上げる。


艶やかな黒い瞳と合う。


「お待たせしました」

「いいえ」


テノールの柔らかな声。


自分に視線が向いて、声をかけられるだけでも幸せだったりする。


碧は顔をうつむかせて鍵をあけた。


鑑賞だと一方通行だけど、こういうちょっとしたコミュニケーションっていうの?


それがあるとやっぱり嬉しいかな。


しかも荷物を持ってもらえるなんて。


人生初だし。


ホスト通いしない限り、二度と無い気がする。