深夜…
ライザはいつもより浅い眠りで目が覚めた。
以前なら、本当に体調が悪く起き上がることもできず、深い眠りに落ちることがほとんどだった。
しかし、最近は調薬が身体に合い、グッと体調が良くなっている。
(目が覚めてしまったな)
ライザは目を開けて天井を見た。
昼間はクルガがやってきて、挑発して帰った事も原因かもしれない。
「ふー…」
大きな溜息をついた。
その時。
ライザは何か違和感を覚え、廊下へ出る扉を見た。
(……気のせいか?)
そう思った瞬間、扉の下の隙間から何かキラッと光るものが入ってくるのが見えた。
と、少しの差で香りが漂い出した。
(これは…‼︎)
覚えのある香りに、ライザはとっさに鼻と口を布団の上から押さえた。
数十秒。
それだけで飛散しているものの効果は消える。
ライザは成分が変化して光っている間は息を止めた。
そして、目で光が消えたのを確認して、静かに呼吸を再開した。
(……大丈夫そうだな。)
香りが消えたのを確認し、ライザは鼻と口も解放し、大きく呼吸をした。
呼吸が整ったその時。
扉のノブがゆっくりと動いた。
ライザは何事もなかったかのように目を閉じ、その者がやってくるのを待った。
ゆっくりと…足音を消すように近付いて、ライザが横になっているベッドの側で歩みを止めた。
目を、開けても良かったが…
ライザはそのまま寝たふりをした。
しばらくすると、ライザの胸あたりがほんのり温かくなってきた。
まるで、身体の芯を優しく撫でられているような、抱きしめられているような感覚になったのだ。
(…そういう事だったのか…)
ライザは、温かくなった自分の胸にそっと添えられている手を握った。
握られた手は驚いて、一瞬で手に力が入ったのがわかった。
「…マーガレット…。それ以上はいけない。」
「……お…お父様…」
ライザに手を握られたマーガレットは、見つかってしまったことに動揺を隠すことはできなかった。
今まで温かかった手は一気に冷め、マーガレットの顔色も血の気が引くように悪くなった。
「大丈夫か?別に怒ってはいないから、とにかくベッドに座りなさい。」
ライザはマーガレットの状態を見て、どちらが病人なのかわからないなと思った。
マーガレットは下を向き無言のままライザのベッドの左横に腰掛けた。
ライザは身体を起こし、マーガレットの顔を横から見た。
俯いたマーガレットの顔色は悪いままだ。
「マーガレット…無理をしてはいけない。」
「……ごめんなさい…。」
応えた声は、今にも泣きそうで震えていた。
ライザはマーガレットの頭に手を持って行き、ポンポンと優しく撫でた。
すると、マーガレットの目から大粒の涙がボロボロとこぼれ出した。
「おいで。」
ライザはマーガレットの手を引いて胸に寄せた。
「…っぐす…」
マーガレットはライザの胸で声を抑えて泣いた。
ライザはもう一度優しく頭を撫で、
「無理をさせたな…。お陰で元気になったよ。」
その言葉でマーガレットは顔を上げた。
「…っでも‼︎」
「……大丈夫だから。」
ライザは微笑み、涙で濡れたマーガレットの顔にそっと手を添えた。
「ありがとう、マーガレット。」
そう言い、マーガレットの顔から手を離すと、マーガレットはそのまま意識を失った。

