「兄さん、最近調子がいいみたいだね。」
ライザの定期治療の為、クルガが部屋に入ってきた。
「そうだな。」
ライザはベッドに座って本を読みながら答えた。
クルガはベッドの横にある椅子に座り、足を組んだ。
「…なぜ、僕が直接治療をしていないのに良くなっているんだい?」
「…良くなると都合が悪いのか?」
クルガはその言葉に『ふん…』と鼻で答えた。
表向きは週に一度、定期治療をする為にテンペスト邸にやってくるクルガ。
しかし、実際は一切治療をしていない。
「長老共がうるさくなければ、わざわざこんな所にはこないさ。」
そういうとクルガはため息をついた。
テンペスト家の当主はライザだが、治療師としての先輩方はもちろんいる。
能力ではライザ、クルガが優れていても、年功序列に勝てない事も多々あるのだ。
ライザが体調を崩した時、クルガに治療をするよう指示したのは、治療師の先輩にあたる長老たちだった。
ライザもクルガも反発したのだが、2人の反発も虚しく、週一の治療が決定した。
しかし、ライザは治療を拒否し、クルガも治療師としての役目は果たさない。
治療初日からずっと続けているルールである。
「ま、治療師としての僕の評価が下がるのを防いでるって事はメリットだけどね。」
クルガも鞄から本を取り出し、パラパラとめくった。
「あぁ、あとマーガレットに会える機会が増えたのもメリットだね。」
その言葉に、ライザは目線を本からクルガに移した。
目線の先のクルガは不敵に笑っている。
「…くっ。そんなに睨まなくても、兄さんがいる間はもう何もしないよ。」
クルガは自分を睨みつけるライザを見ながら言った。
「言っただろ?マーガレットの成長した姿を見ることができるのならって。兄さんはそれができるのかな?」
クルガはクスクスと笑った。
「はー…あと2年、3年もしたら、マーガレットは今以上に美しい女性になるだろうね。」
「お前には会わさん。」
ライザは静かに警告した。
「兄さんがいる間は、だろ?それ以降はこっちの自由さ。」
クルガは開いたばかりの本を閉じ、鞄になおした。
そして鞄を持って立ち上がり、部屋の扉に向かって歩き出した。
「…さっさとくたばれ。」
そう言うと、クルガは部屋を出て行った。
それを見てライザは大きな溜息をついた。

