「お父様?マーガレットです。」
「あぁ、入りなさい。」
マーガレットはライザの部屋の扉を開けた。
「失礼します。」
マーガレットは静かに部屋に入り、扉を閉めた。
しかし…部屋に入ったが、マーガレットは下を向いたままそこから前に進めない。
その姿をみてライザが声を掛けた。
「マーガレット、ここまで来なさい。」
「…はい…。」
マーガレットの身体がビクッとなったのがわかった。
ライザはそれで理解した。
調合がばれた事で怒られると思っているのだ。
マーガレットがライザの横までやってきた。
「久しぶりだな。きちんと治療師として励んでいるか?」
「はい。まだまだ未熟ですが…。」
マーガレットは下を向いたまま答えた。
「…薬草師…の知識と技術も得てきたようだな。」
その言葉に、マーガレットのギュッと握った手に力が入った。
ライザはふっと微笑んだ。
「マーガレット、顔を上げなさい。」
マーガレットはゆっくりと顔を上げ、ライザを見た。
その表情は今にも泣きそうだ。
「…なんて顔をしてるんだ。」
「…だって…お父様…。お久しぶりなんだもの…。」
そう言いながら、マーガレットはポロポロと涙をこぼした。
その姿をみて、ライザはつられて涙腺が緩むのを必死でこらえた。
マーガレットは勝手に薬を調合して怒られるより、怒られてでもライザと会えることが嬉しかった。
「…悪かった。心配させたな。」
「…っ…心配しましたっ!」
マーガレットは嗚咽をこらえながら答えた。
ライザは、自分の小さなプライドのせいでたった一人の娘に、予想以上に寂しい思いをさせていたのだと知ったと共に、発病して部屋にこもってからも自分を父として慕い想ってくれていたのだとわかり、胸が熱くなるのがわかった。
そして、言葉は自然とこぼれた。
「マーガレット…お前はこれからも私の大切な娘だよ。」
ライザは「おいで」とマーガレットの手を引いた。
マーガレットの引き寄せられた身体は力が抜け、膝は床に落ちた。
しかし、顔はライザの胸の中に。
「ありがとう…愛してるよ。」
そう言うと、ライザは胸の中のマーガレットを両腕でギュッと抱きしめた。
マーガレットは流れる涙を拭うことなく、ライザの胸に顔を押し当て、背部に回した手でギュッとライザを握りしめた。
そして抑えていた想いは泣き声と共にライザの元へ。
「お父様っ…私も愛していますっ…!ずっと私のお父様でいてっ…」
「……っ…もちろんだよ」
ライザの瞳から涙が流れた。
2人はまぶたが腫れるまで泣き続け、誰にも壊されることのない親子の絆を結んだ。

