藍の家に着き、藍は僕を家に入れてくれてリビングにあるイスに座ってと言ってきた

僕は少しドキドキしながらも
藍の家の中を見渡し、イスに座った


「コーヒーでよかったかしら?」

「あ…はい、大丈夫です」


藍は僕の目の前にあるテーブルにコップに入ったコーヒーを置き、僕に渡してきた

藍はそのまま僕と向かい合わせになるようにイスに座りコーヒーを飲んでいた


「そうだわ…
あなたの名前聞いていなかったわね…?
名前聞いていいかしら…?」

「あ…えっと…」


藍は思い出したように僕にニコッと笑い尋ねてきた


これは言っていいのだろうか…?
カーラさんが余計なことはするなって言ってたしな…

でも言ったところで…
藍は僕だと気づくだろうか…?


「ああ…ごめんなさいね…?
先に名乗らないといけないわよね…?

私の名前は…水野 藍って言うの
この歳で藍って名前は、少し恥ずかしいのよ…

今どきの若い人たちの名前でしょう?
こんな、おばさんが藍なんておかしいわよね…?」


藍は照れたようにフフッと笑うと
またコーヒーを飲んで僕を見てきた


やっぱり…
この人は藍だったんだ…!

カーラさんの言っていたとおりだ…!


「それで…
あなたの名前聞いていいかしら…?」


僕も言わなくちゃ…
僕だと気づかれなくてもいい

だけど…
目の前にいるのは、間違いなく
僕だから…


「僕は…入野し…」

「入野し…?」

「入野 新一 って言います」

「新一さんね」


嘘をついてしまった…
藍に嘘をついてしまった…

僕は本当のことを言おうとした
だけど、何故か言ったらダメな感じがした

藍に僕が入野 心太って言えなかった…