控え目に甘く、想いは直線的

洗面室から戻ると大石さんしかいなかった。


「部長は出掛けられたのですか?」


「ああ、涼くんとコロアールのほうに行ったよ。夕方には戻るかな。なんか用事あった?」


「いえ、何もないです」


部長が外出していて安心した。どんな顔を合わせたらいいのか分からなかったから、いなくてホッとする。

パソコンに向かい、メールチェックを始めた。


「ねえ、野々宮さん。さっき部長と何していたの?」


「えっ? いえ、何もしてないですよ」


突然の質問に冷や汗が出そうになる。洞察力の優れている大石さんは勘も良い。でも、本当のことは言えない。


「ふうん。でも、なんか怪しいなー。要さんの様子も変だったし」


「変でした? どんなふうに?」


「野々宮さんが本当のことを言わないから俺も教えないよ。言えば、もちろん教えてあげるけどね」


「えー、そんな……」


変だという部長の様子を知りたいけど、本当のことは言えない。二人だけの秘密にしておきたいとなぜだか思った。

でも、秘密に出来なくて、柊花には話してしまう。