控え目に甘く、想いは直線的

柴田涼とケーキ店に行ったが、「申し訳ありません。今日は予約のケーキしか用意していなくて…」と、潰れた箱のケーキを切なそうに女性店員は見た。

ほんの10分ほど前に私は、この店員さんから笑顔で「おめでとうございます」と箱を手渡され、私も笑顔で受け取った。

それが10分後にはこんなことになるなんて、私も店員さんも思ってはいなかった事態である。

ショートケーキを買うしかないかも。おめでとうのプレートは、どうしようか……。あれがないとお誕生日感が出ない。


「ちょっと待っていて」


柴田涼は、スマホを操作しながら、店の外に出ていく。店員さんは、他のお客さんの接客に移る。

私はケーキが並ぶショーケースを眺めたあと、外に出た柴田涼を見る。

大学時代の柴田涼の髪は茶色で、少し長めだった。今は、黒髪で短くなっていて、下ろしていた前髪はあげられている。

大人の男になったという感じかな。

一瞬、似た人かなと思ったけど、あの彼女が「涼」と呼んでいたから、同一人物には間違いない。

店内に戻ってきた柴田涼はスマホを片手に外を指差す。方角は駅の方。