私の口の端にもチョコが付着していたようで、それを要さんが舌で舐めた。


「な、な、何を……」


思いもよらない要さんの行動に私の顔は真っ赤になる。こんなの、恥ずかしすぎる!

やだ、どうしよう!

真っ赤な顔を見られたくなくて、両手で顔を覆った。


「真っ赤な夕美、かわいいよ」


私を自分の胸元に引き寄せて抱く要さんは、耳元で甘い言葉を囁く。

またキスをしようと近付く要さんの口を右手で押さえた。止められたのが気に入らないのか要さんの眉間に皺が寄る。


「ダメ。あの、ここではダメです」


「じゃあ、どこならいいの? 今夜、うちに来る?」


「えっ? 今夜ですか? あ! 電話鳴っています! 出ないと」


隣から電話の音が聞こえて、私は要さんを押し退けて立ち上がり、隣へ急いだ。一瞬要さんが私の手を掴みかけたのが視界の隅に入った。

でも、電話が先と見過ごす。誰からか分からないが、待たせてはいけない。

電話は内線だった。赤く光っているボタンを押す。