控え目に甘く、想いは直線的

「上司なので、そう気安く呼ぶのは非常識というかマナー違反のような気がして、簡単に呼ぶのは難しいです」


「真面目な夕美らしい答えだな。でも、俺がいいと言うんだから、言う通りにしてくれないか? 今は部下と見てもいないし」


デートのつもりだと言っていた。部下と手を繋ぐことは確かにしないだろう。部長は私のことを部下ではないなら、なんだと思っているのだろうか。

最後に残っていた味噌汁を飲み終えて、箸を置いた部長は、まだ箸を持ったままでいる私を見つめてきた。

名前で呼べという圧力がまた感じられて、残りの料理の味が分からなくなった。


「ごちそうさまです」と小さく告げると、部長が立ち上がったので、私も立つ。

部長の会計が終わってから自分の分を払おうと千円札二枚を財布から吹き出そうとした。

だけど、止められてしまう。


「デートだから夕美は何も出さなくていい」


「ありがとうございます」


反論したい気持ちはもちろんあったが、おとなしく従う。映画館でもチケットは部長が買ってくれた。