控え目に甘く、想いは直線的

呼べないなら呼ばなければいいかも。名前なんて呼ばなくても会話は成立する。うん、大丈夫だ。


「分かりました。不本意ですけど、ご希望通りにします」


「じゃあ、まず言ってみて」


「あの、用のあるときに呼ぶのでそれまで待ってください」


「お待たせしましたー! 刺身定食のお客様ー!」


部長の変な圧力を遮るように威勢の良い店員さんが刺身定食を部長の前に置く。

とりあえず今のところは大丈夫。あとは、会話で気を付ければいい。味噌汁のお椀の蓋を開ける部長を見ながら、私はそっと胸を撫で下ろした。


「涼のことは名前で呼ぶのに、なぜ俺は呼べない?」


終わった話を蒸し返されて、食べていたご飯が喉に詰まりそうになった。まさか涼さんが出てくるとは思いもしてない。

私、部長の前で涼さんを呼んだことがあっただろうか。覚えていないけど、話の中で出てきたことはあるし、人事部で話もしてるから、あるかもしれない。

だからといって、なぜと聞かれてもこっちもなぜそんなことを気にするのかと聞きたくなる。