控え目に甘く、想いは直線的

「柴田部長。野々宮さんは今、忙しいのでご自分のグループの人に頼んでもらえませんか?」


田島さんが言うことは間違っていない。でも、こんなふうに反論した人を大石さん以外で見たのが初めてだったから驚いた。

部長は水の入ったペットボトルを同じグループの女性社員と運んでいた。何を私に頼みたいのかは分からないけど、いつも部長の指示や命令には応えていたから、そばに行こうとした。

だけど、田島さんの力は思いのほか強くて身動き出来ない。なんかこの人、怖い。


「ぶ、部長……」


力の緩めない田島さんから救ってもらいたく声を出すが、呼ぶことしか出来ない。私の声を聞いた部長は眉間に皺を寄せるが、いつもの不機嫌な表情とは違った。

不機嫌を通り越して、怒りを含んでいるように見えた。

部長は持っていたペットボトルを隣にいる女性社員に託して、私に向かって歩いてくる。


「離せ。野々宮、帰るぞ」


「へ? ま、まだ始まったばかりというか何もしてないですよ? まだこれからだし」