控え目に甘く、想いは直線的

「なんだ、外れないのか?」


降りようとして運転席側のドアを開けた部長がもう一度ドアを閉めて、私のシートベルトを外そうと体を覆い被さるように近付けてきた。

香水でもつけているのか柑橘系の爽やかな香りだ鼻をくすぐる。

カチッと音を立てて、ベルトは外れたが部長の体はそのままで顔を私と同じくらいの高さにあげた。

近い!

ふと夢で見た光景が脳裏に浮かぶ。夢の中では椅子を倒されてキスされたけど……今もキス出来るくらいに近い距離だ。シートにしっかりと背中をつけているから逃げようとしても逃げれない。

息がかかるくらいまで顔を近付けてきたので、思わず目を閉じる。キスするのかと身構えてしまった。

しかし、キスはされなく……「ふ」と軽く笑う声が聞こえ、前髪に手が触れられた。なんだろう?

閉じた目を開けると至近距離に部長の顔があって、心臓が大きく跳ねる。


「前髪あげた方が大人っぽく見えるけど、あげないの?」


「ま、まえがみ?」