「ロングアイランド・アイスティーです」

そっとグラスに鼻を近づけると、紅茶の匂いがした。

へえ、紅茶のカクテルなのか。

少しだけ口をつけたら、紅茶の味がした。

「これ、紅茶を1滴も使っていないんです」

伊地知くんが言った。

「えっ、ウソ…」

私はもう1度グラスに鼻を近づけた。

「匂いも味も紅茶なんだけど…」

呟くようにそう言った私に、
「お酒があまり飲めない千沙さんも、これだったら飲めるかなと思ったんです。

ああ、ベースはウォッカなので飲み過ぎには気をつけてくださいね」

伊地知くんが言い返した。

「飲み過ぎには気をつけて、って…」

私は苦笑いをした後、グラスに口をつけた。