野間の顔からスッと赤みが消えた。

同時にうつむく。

「からかってるなら、よしてよ」

そして小さな声でそう言って来る。

「いや、別にからかってるわけじゃ……」

「もうやめた方がいいよ」

そう言ったのは本田だった。

本田はジッと俺を見ている。

睨まれているのに、見られているだけでなんだか居心地が悪くなった。

「……わかった。悪かったな」

悪気なんて全くなかったのだが、結局そんな風になってしまった。

教室を出ると女子生徒たちが近づいてくる。

「ねぇあの2人と何話してたの?」

「2人と仲良くするなんてやめなよ、平野君らしくない」

「そうだよ。それより、あたしたちと遊ぼうよ」

きゃぁきゃぁ騒いで勝手に腕を組んでくる女子たちに「チッ」と舌打ちをする。

すると騒いでいた声は一瞬にして小さくなり、そしてみんな俺から離れて行った。

俺が1つ舌打ちをするのは「どこかへ行け」という合図なんだ。

野間は遊園地のチケットを受け取ってはくれなかった。

かといって俺の顔と父さんの権力だけで近づいてくる女子を誘う気になんてなれなかった。

そうして、俺は今放課後のグラウンドで村田さんに声をかけたのだった。