「くる、し……っ」

「っ、先輩かわい」


おそらく真っ赤になっているだろう私の頬にすっと手を添えて、優しく撫で上げる。こつん、と額と額を合わせて、後輩くんは今まで見たことのない様な熱っぽい瞳が私に微笑みかける。

彼には、一切の息の乱れはなく、何度も息を吸う音が聞こえるのは私だけだった。


そして、また私の口元に吐息が掛かり始めて、私は慌てて口元を隠す様に手の甲を押し当てる。


すると、むっと唇を尖らせ、拗ねたように私を見上げた後、凝りもせずそのまま口元を隠していた私の手のひらに、ちゅ、とわざとらしく音を立てながら何度もキスを繰り返す。熱い、熱くて、溶けそう。


「す、すとっぷ……!」

「なんで?」

「はずかしくて、死んじゃいそう」


私がそういうと、後輩は最後に落としたキスから視線を上げて、私を見上げる。その瞳がだんだんといつもの嗜虐心を含んだものに変わっていくのが、目に見えて分かる。ふっと目を細めれば、その綺麗な顔が、泣きぼくろのせいでより一層、私にはない大人っぽさを滲ませた。


そして、すうっと私に顔を近づけ、耳元で囁く。

「そんなの、逆効果ですから」

「……!」

思わずぶわあああああっと一気に顔が熱くなった。緊張と焦りで、ぎこちなくなってしまったのをいいことに、隠していた手のひらをどけて、再び口元に顔を近づけてくる。甘くて、甘くて、溶かされてしまいそうなほど、熱く、彼は笑って見せた。



「抑えるの、大変でしたけど。


 ──俺、煩悩まみれなので、覚悟してくださいね」