「あー彼氏欲しい」

「その眼と鼻と口と眉と貧相な体をどうにかしないと無理じゃないっすかね」

「全部じゃねえか」

「まさか、さすがに先輩にもいいところの一つや二つ……ある、……あっ、ないわ」

「おうおう表出ろやこの野郎!! その綺麗なお顔ぼっこぼこにしてやる!」

「スイマセンねぇ、何もしなくても女がやってきてしまって」


人を小ばかにしたようにふんと、鼻を鳴らしながらかくも優越感に浸ったような顔で、私を見下してくる後輩。

今日も今日とて、私に返ってくる言葉に私の全身が松ぼっくりになってしまうんじゃないかと思うほど、ブーメランが突き刺さる。

言いたいことは言い終わったとばかりに、そいつは手に持っていた分厚めの文庫本に視線を落とす。その白い頬に降りかかる、艶のある黒髪。目を細めながら物憂げに視線を落とす瞳。そして、年齢よりも少しだけ幼く見える顔立ちに不釣り合いなはずのなきぼくろが控えめに言ってエロい。

その華奢な長い足が優雅に組まれた時にゃ、その美しさに見惚れないものはいないだろう。
見てくれだけは、国宝級の私の後輩は、学校では王子様なんて恥ずかしいあだ名をつけられて女子たちからの人気を総なめにしている張本人だ。