「寧、昨日はごめん。あなたが傷つくのが見ていられなくて頭に血が上っちゃったみたい」

 「…僕もごめん。ひどい言葉で傷つけた」

 落ち込んでいる、私以上に。

 その日のうちに呼び出した寧は、私の大好きなケーキを持参して頭を下げた。

 「ゆきは僕の大事な親友だ。失うなんて考えられない」

 これが

 ゆきは僕の大事な恋人だ。失うなんて考えられない。

 なら、本当に幸せだけど、今はまだその時じゃない。

 しおらしく謝る寧の顔を上げさせ、お互いに謝罪して仲直りした。

 ケーキは二人で公園で食べた。

 小野田翠のことはもちろん秘密。

 私と絶交なんて考えられないと語る寧の話を、楽しい笑い声をあげて聞くこの瞬間が好き。

 それを続けるためにも、思いを伝えるのはまた今度。

 長い片思いはまだ始まったばかり。

 スタートをするのはまだ先。