春奈が何か言う度に口から血が流れ出し、それが飛び散って窓についた。


口の中は真っ赤に染まりまるで吸血鬼のように見えてくる。


あたしはそれでも春奈から目を離さなかった。


たった数時間、ううん数十分かもしれない。


一緒にいた相手の最期を見届けようと思った。


春奈は大量に吐血し、その血のついた手で窓を叩いた。


しかし、その力も徐々に失われていく。


春奈は窓を叩く事をやめて、フラフラと部屋の中央へと歩いて行った。


自分が今どこにいるのかもわかっていないようで、その目は空中を彷徨っている。


そして……真っ白なソファに横倒しになってしまった。


ソファは真っ赤に染まり、春奈はイヤイヤと首をふる子供のように大きく痙攣を始めた。


あぁ。


もうすぐ命が消える。


知らない間に涙が出てきていた。


死ぬ寸前までこんなにも苦しんで、春奈は死ぬ。


ソファの上で散々のた打ち回っていた春奈は、一瞬を境にして動きを止めた。


白いソファは春奈が暴れたせいで、不規則な赤い模様をつけた。


それはまるで、白い棺桶に入った春奈が真っ赤なバラに囲まれているように見えたのだった。