「助かった……」


翔吾はその場に膝をつき、また血を吐いた。


安心したのもつかの間で、閉められたドアの上半分が窓のようになっていて、そこが自動的に開き始めた。


窓の向こうはガラスになっていて、室内の様子が見えるようになっている。


また、人が死ぬのを見せられるのか。


《mother》の趣味の悪さに吐き気を覚えたが、さっき全部吐き出してしまったので何もでてこなかった。


何度かその場で吐いた翔吾がようやく立ち上がると、窓の向こうの春奈が体を起こした。


痙攣は止まっていて、電流の流れが途絶えたのだとわかった。


春奈が何かを叫びながらこちらへ走って来る。


あたしは咄嗟に窓から離れていた。


春奈が窓にすがりつくようにしてこちらを見て、懸命になにかを訴えかけている。


しかし、その声はこちらには全く届かない。


春奈は時々通気口の方を振り返りながら、ドアを叩く。


その目は真っ赤に充血していて、ジワジワと赤い涙が滲んできていた。


「やめてよ……」


桃乃が震えた声で言った。