ルキがしゃがみ込んで紙切れを手にとった瞬間、入ってきたドアが音を立てて閉じたのだ。


一瞬、全員の視線がそちらへ向く。


でも、こうなることはなんとなく予測できていた。


あの《奴隷部屋》で本当に人が死んだのだ。


それを見ていたあたしたちが、簡単にこの建物から出られるはずがない。


「その紙、なんて書いてあるの?」


春奈が聞くと、ルキが紙切れの文字を読み上げ始めた。


「《この中で外に出るのにふさわしい人間を1人決めなさい》って……」


「なんだよそれ」


翔吾がため息とともにそんな言葉を吐き出した。


簡単に言いなおせば、ここにいる全員が脱出することはできない。


そういう意味合いだ。


「この中で1人を決めるなんて無理だろ。互いの事を知らなさすぎる」


ルキが言う。


「知っていても、自分を犠牲にする勇気があるかどうか……」


あたしは小さく呟いた。


1人だけ助かるのなら、あたしは迷わず翔吾を選ぶだろう。


だけど、翔吾はきっとあたしを選ぶ。


その時点で票が割れ、2人とも助からなくなってしまう可能性が出てくる。