目が覚めた時、あたしは灰色の部屋の中にいた。


頭が痛くてこめかみに手を当てると、血管がドクンドクンと脈打っているのがわかった。


あたしは一体どうしてしまったんだろう?


その疑問が浮かんだ瞬間、言い知れぬ不安が胸を覆い尽くした。


あたしの名前は世田朱里(セタ シュリ)。


梅田高校の1年生、16歳。


うん、そう。


よかった、覚えている。


一瞬重度の記憶喪失にでもなっているのかと思ったが、自分の情報はちゃんと持っていた。


自分が何者であるかしっかりと覚えている事で少し安心したあたしは、周囲を見回した。


どのくらいの広さがあるのかわからないが、灰色で真四角の部屋だ。


窓はなく、天井からぶら下がっている裸電球一個が周囲を照らし出している。


部屋の中には同年代くらいの男女がいて、あたしのように目を覚まして混乱した表情を浮かべたり、まだ固く目を閉じている子もいる。