「無駄にしたくないから」

「は?」

「まひろがいてくれて、亘がいる。そして、楓くんがいてくれる今を、大切にしたいの」


せっかく、そばにいてくれる人がいるのに。
そこで、目を閉じ耳を塞いだままじゃダメだって。



「私も、今を楽しみたいの」

「そうか」

「楓くんのおかげだよ」

「は?俺の?」

「うん。楓くんの事が平気になれた。それで、少し前向きになれたの。だから、楓くんのおかげ」



楓くんだけではなく。
これから、他の人たちも強くなくなるかもしれない。

今までお父さん以外のどんな男の人だって怖かった。

それが、楓くんのことは平気になれた。



好きという気持ちも持てた。



それは、私にとってかなりの前進だ。



「海って、私久しぶりなんだ。だから、とても楽しい」



そう言って笑った。