「ケンちゃんさっきの人って?」



ケンさんが、バス停まで送ってくれることになって歩く帰り道、まひろが問いかけた。




「ああ、KAEDEの事務所の社長だよ。草加俊(くさかとし)さん。たぶん歳は30歳で若社長だよ」

「へぇー。すごい優しそうな人だったね」

「敏腕社長らしいぞ。あの若さで、事務所を受け継いで、社長なのにフットワーク軽くて、人当たりもいい」

「そうなんだ」

「俺の会社は、事務所と契約してるだけだから、詳しくは知らないけどな」




詳しく説明してくれたところでバス停につき、丁度バスがやってきた。
そんなすごい人に会ったんだ。
いつか、ちゃんと謝りたい。

あんな態度とったこと。



「行こう、梨乃。ありがとね、ケンちゃん!」

「ありがとうございました」

「ああ。またな!梨乃ちゃんも、ありがとう」




ケンさんと別れ、バスに乗り込む。
動き出したバスは、私たちを乗せ。


心に重い鉛をため込んで、私は流れゆく景色を眺めていた。