ゆりかご

間もなく、勧誘の声をすり抜けたコータローと呼ばれていた子が居なくなり、野次馬たちも散っていった。

「あいつスゴかったな。」

「超早かったねー。」

「陸上やってたのかな。」

「陸上部入らないなんて、もったいなくない?」

すれ違い様に聞こえてきた野次馬たちの話し声ーーーそのどれもが、彼を称賛するものばかりだった。

「あの子、走ってたみたいだね〜。見てみたかったなぁ。」

「そーだね…。」

野次馬たちの話し声を聞いて羨ましそうに言う美羽に、あたしはサラリと返事をした。


”あたし、あの子、知ってるかもしれない…。”

さっき、何であんなことを言ったんだろうーーー…。