ゆりかご

よくわからない気持ちのまま、あたしは美羽と一緒に野次馬へと近づいていった。


「なっ?頼むよ昊太郎!陸上部入れよ。」

「いや〜…、オレ、もう陸上は……。」

「そんなこと言うなよ、おまえが居たら百人力なんだから。さっき走ったから解るだろ?」

「でも…すいません先輩。」

陸上部の勧誘を苦笑いで交わす、コータローと呼ばれた子。

「誘われてるなんて、あの子スゴイんだね。ウチらと同じ1年だよね。」

美羽が、感心したように話しかけてきた。

「うん、多分ね。」

…翔矢も、中学の時の大会で結構イイとこまでいってたから、こんな風に勧誘とかされちゃってるのかな。

だとしたらあの子も……。

大会で会った事があるかもーーーそう思ったけど、あたしの記憶の中からは、出てこなかったんだ。