ゆりかご

「泣きたくなる時があるんだろ?前に自分で言ってただろうが。」

「…。」

あたしは、黙ってアイスを一口食べた。

すぐに溶けて、口の中がバニラ味になる。

こんな風に、あたしの気持ちも溶けていけばいいのに。

溶けてなくなれば、こんな思いをしなくてもいいんだから…。


「お兄ちゃん、あたし…フラれちゃったんだ。」

「あ?そうなのか?あー…まぁ、アレだ、そんな事もあるだろ。みんな経験することだ、気にするな。」

「…くっ……。」

「なんだよ。変な事言ったか?」

まるで人生の大先輩かのような口ぶりに、思わず笑ってしまったあたしを、横目でチラリと見るお兄ちゃん。

「ありがとう。ちょっとだけ、元気でた。」

「そうか?ならいいけど。アイス溶けるぞ、食え。」

そう言ってお兄ちゃんは、テレビに視線を戻した。


「ただいま〜。遅くなっちゃった、ごめんね。」

そう言いながらお母さん達が帰ってきたのは、19時をまわっていた。