それで、僕は今、歩いている。
夢乃ちゃんがいる病院に向かってだ。
あれからも、ほとんど毎日お見舞いするのが僕の日課だ。
小夢ちゃんと出会った自販機で飲み物を買う。
思えば、ここで小夢ちゃんに500円渡さなければ、夢乃ちゃんには会っていない。
そう思うと、人生とは不思議だと嫌でも感じてしまう。
僕はエレベーターに乗る。
途中でエレベーターが止まって看護師さんが入ってくる。もちろん、あの看護師さんだ。
「あら、毎日えらいわね。そろそろ気づいて貰えた?」
僕のことをからかうのが大好きな看護師さんだ。
僕は、
「いいえ、まだですよー」
と軽く返事をしてエレベーターを降りる。
病室の扉を叩く。
「はーい」
小夢ちゃんの声だ。
ガラッと開ける。
「やぁ、高姫」
小夢ちゃんはあいかわらずちゃんと出迎えてくれる。
「こんにちは、小夢ちゃん」
僕は挨拶をする。
そして、ベッドの上で寝る夢乃ちゃんを見る。
よく寝て、よく食べて、よく笑う。
少し鈍くて、とっても純粋。
1日に一時間しか起きていられない病気を持っている。
僕が恋するそんな眠坂 夢乃ちゃんは、
「ふわぁ……あ、おはよ……高姫くん?」
夢を見過ぎるお年頃。


