警官はそう言った。


「はぁ……。そうです…か」


僕は思う。親切な小夢ちゃんを。


僕は思う。ちょっと怖い林檎さんを。


僕は思う。海を見たがった夢乃ちゃんを。


僕は思う。海を見せてあげたい僕を!


「すいませんが……僕が」


僕はわざと小声で言う。


「ん?なんだ?」


警官は顔をこちらに近づける。


「僕が!守野 高姫です!」


僕は一瞬で相手の鼻に一撃を入れる。


入れると同時にドアを開けて全力で走る。


「ぐぅ……あ」


警官は痛そうに鼻を押さえている。


「ごめんなさい!」


僕は走りながら謝った。


「でぇぇぇい!夢乃ちゃん!」


夢乃ちゃんが寝ているパトカーにできる限りの速さで取り付き、ドアを開ける。


「うわっ!お前、何をしている!」


警官が僕の方を見て驚くが、気にせず夢乃ちゃんをお姫様抱っこで連れ出す。


「あ!高姫ー!」


呼びかけは後ろの方からだった。小夢ちゃんだ。


僕は小夢ちゃんの方を見て、全力で海に向かって走る。