夢を見すぎるお年頃


「はぁ?あぁもちろんあるさ!たっぷり用意してあるよー!」


男の人は助手席から松葉杖をついて出てきて言う。


「ありがとうございます!夢乃ちゃん!」


僕はもうお腹が空きすぎて元気の無い夢乃ちゃんが乗る車イスを押して男の人についていく。


「お前って、皆に優しいからいつか絶対何かで損するぞ」


お決まりのセリフが頭の中に響く。


はいはい、小学校1年から高校2年の今まで数えて11年の付き合いの親友。


そうだな。お前の言っている事はきっと正しいよ。でも、こういうふうに良くされたら悪い気持ちはしない!


「い、いやぁ…よく食べるねぇ!」


ご飯を出してくれるのはおそらく男の人のお嫁さんにあたる人だろう。


その人が夢乃ちゃんを見て驚いた。


「もぐ…!もぐ…!このご飯とっても美味しいです!」


すっかり元気を取り戻した夢乃ちゃん。


良かったぁ。


「それにしても、ありがとねぇ。家の主人を助けてくれて」


女の人にお礼を言われたので、僕は一旦食器を置いてただ、いえいえと言った。


「おい、ボウズ。海に行きたいんだろ?」


唐突にご老人が聞いてくる。


「はい!海に行くんです!」


僕より先に返事をしたのは目をキラキラと輝かせた本当に楽しみな夢乃ちゃんだ。