それからかなり歩き続けて……、夜が明ける頃。
「ぶぇっくションっ!──はぁ寒っ」
五月とはいえ、やっぱり明け方は冷える。
夜のうちに夢乃ちゃんに毛布をかけておいて良かった。
風邪でも引いていたら小夢ちゃんに会わせる顔がないからね。
そんな事を思ってもやはり人間限界がある。
もう、駄目だぁ。お腹が空いた。腕時計を見る。ハハハ、昼の3時前だってよ。
ブルルルルル……!
「ん…?」
僕は耳をすまして聞く。
エンジン音だ…!
まさか、救急車を呼んだ時にバレた…?
「おーい!兄ちゃーん!探したぞー!」
軽トラの助手席からあの男の人が手を振って僕を呼び止める。
「あ…!あの時の崖下にいた人…!」
キキィッ。軽トラが僕達の隣で止まった。
「いやー、兄ちゃん探したよ!」
「え…、あ、はい」
僕は返事をする。元気になったらしく良かった。
「おい、ボウズ……。家の息子が世話になったな。礼を言わせてくれ…」
運転席のご老人がそう言ってくれる。この男の人のお父さん…?なのかな?


