「夢乃ちゃん、待っててね」
僕は車イスの車輪をロックして一応毛布をかけて言う。
崖をのぞき込むと、崖の下に誰かが倒れていた。
「うわっ!だ、大丈夫ですかー?」
僕が呼びかけると、
「大丈夫じゃ…無い……助けて…!」
えぇ、結構な高さがあるこの崖から?
「わ、分かりましたー!待っててください」
そう言って考える。普通に、三階建て位の高さがあるぞ…?
「お前って、皆に優しいからいつか絶対何かで損するぞ」
腐れ縁の親友に言われた言葉が響く。
「わかってるよ。でも…これしか出来ないんだよ」
いや、違う。それは今の自分が思っていることだ。あの時はなんて言った……?
「助け……て」
一気に現実に戻される。今はこの人を助けなければ…!
周りを見ると、降りれそうな所があった。
それでも、かなり急だが…あの坂を転げ落ちた今の僕には全然平気だ。
「よしっ…!」
僕は決心をして慎重に降りる。


