「うわっ!」
思ったより河は深い。膝のあたりまで水に浸かってしまった。
「まずい!」
僕は夢乃ちゃんの車イスが沈んでいるのをなんとか、なんとか掴んで支える。
流れもかなり早い。僕と夢乃ちゃんの体は流されそうだ。
「でぇぇぇい!」
僕は掛け声とともになんとか渡りきる。
夢乃ちゃんの足が濡れてしまっているのでタオルで拭いた。
「さて…と。後は歩くだけ……か」
僕はこれからの果てしない道を考えて嫌になったので、目をつぶった。
「お前って、皆に優しいからいつか絶対何かで損するぞ」
頭の中に付き合いの長い親友の声が響く。
これはいつ言われたっけ…?その時自分はなんと答えたっけ…?
僕はそんなどうでもいい事を思いながら車イスを押した。