僕は見たのだ。


テレビを見る夢乃ちゃんのたまらなく寂しそうな表情を。


一目惚れした僕はあんな顔の夢乃ちゃんを見ているのは凄く…つらい。


だから頼む。


「駄目よ。あの子達を守るのが…私とあの人の約束だもの…」


林檎さんは僕をジッと見たままそう言う。
言葉の重みが全く違った。


そして林檎さんは立ち去ろうと僕の横を通る。


「僕が!……僕が絶対に夢乃ちゃんを守ります!」


僕は通りすがる林檎さんに言った。


「しつこいですよ、あなたが何をしようと無理なものは無理ですから……ねっ!」


林檎さんの言葉とともに何かの衝撃が頭に走った。


「うわっ……!」


右半分の視界が暗くなっていく。


左側も見えなくなってくる。僕はなんとか薄れゆく左の視界で林檎さんが振ったであろうバッグを見ていた。


「もう二度と私の子供に会わないで…」


林檎さんはそう言って立ち去る。


僕はグラリと、廊下に倒れる。


視界が真っ暗になる。